最後に残るのは「やりたい」という熱意
ただ、アクセラレーターの採択企業すべてに十分な成果が出たわけではなく、差異がある。6月の成果報告会時点においては、試行の結果、食品メーカーや小売店から活動継続の要望や実証実験の許諾を受けられた企業もあった一方、製品やサービスがコンセプト止まりで終わっている企業もあった。
住氏自身も「プレッシャーを感じていないわけではない」と吐露する。ただしそれでも、目前の売り上げや利益を急ぐつもりはないという。「あくまでアクセラレータは社会課題の解決が一義であり、また料理をする生活者により良いインパクトを生み出すことが目標だ。売り上げや利益などは、その結果として生み出される。この点については、クックパッドとして一致しているところだ」(住氏)。
住氏は2015年にクックパッドに中途入社しているが、それ以前は通信サービスの企業に勤務し、2014年に米国シリコンバレーでの駐在を経験している。現地の起業家や企業の新規事業開発者と交流する中で、世界にインパクトを与えるイノベーターに共通しているのは、「課題を絶対に解決したい」という強い思いや、それにまつわる原体験を持っていることに気づいたという。
事業活動である限り、利益が出なければ継続できない。そのためのリソースは欠かせない。「だが、結局一番最後に残るのは『何が何でもやりたい』という思いで、それがなければ何にもならない」と住氏は強調する。「私もこのアクセラレータは自分から『やりたい』と経営陣に言って手を挙げて取り組んでいる。起業家の『やりたい』という思いに応えながら進めていきたい」(住氏)。
ベンチャーに必要とされる存在になれるか
一般ユーザーが料理のレシピ情報を投稿し共有するサービスを立ち上げ、かつてはベンチャーの雄としてその名を馳せたクックパッドだが、近年は動画を使用した競合サービスの登場で、競争環境は厳しくなっている。2017年12月期の業績を見ると、当期利益は34億9100万円と増益(前年度は9億円)だったものの、売上高は134億円で減収(前年度は168億円)に終わった。