ネット通販やSNSを起点としながら、お客さまに対して、電気や水道などの生活インフラ、エンターテインメント、グルメ、金融・保険など生活にまつわるさまざまなサービスを提供することによって、「ライフデザイン」という大きな網で囲い込むか。

 そして、さらには企業とお客さまがデータを媒介にして繋がり続けることで、お客さまのアプリやPCサイトの利用状況、移動に関する情報、趣味嗜好など購買に関係するさまざまな行動データを吸い上げ、ビッグデータとしていかに戦略的に運用していくのか。

 こうして考えていくと、事業採算性がそれほど高くないと推察されるシェア自転車ビジネスは、それを運営するアリババ集団やテンセントにとっては、「ライフデザイン企業」としての自社の成長戦略を描く上での(いくつかある)「橋頭堡のひとつ」に過ぎないことが透けて見えるようだ。

 事実、この原稿を書いている2018年4月5日(木)の日本経済新聞(朝刊)には、テンセント系列でインターネット出前・レストラン検索大手の「美団外売」がモバイクを完全子会社にする形で買収するという、ホットな記事が掲載されている。

【参考】テンセント、新サービスでアリババと火花
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28996690U8A400C1FFE000/

 運営会社のテンセントが、ネット出前とシェア自転車のサービスをレバレッジさせることで、お客さまにどんなサービスを提供しようと目論んでいるか、また、それによっていかに自陣営のモバイル決済サービス「微信支付」の付加価値を高めようとしているかは明白であろう。

上海のシェア自転車は「色」がブランドの重要な識別要素である。黄色はオッフォ、オレンジ色はモバイク。

 翻って、日本の企業はどうか。

 携帯電話キャリア、ケーブルテレビ会社や保険会社など、業界の垣根を超えて企業の次の「なりわい」として「ライフデザイン」を標榜している企業が多い。

 お客さまと企業の間のコンタクトポイント(ブランド接点)の中で、何が最も重要なのか。

 お客さま主語でのサービスメニューの充実が最優先事項であることは否定しないが、肝心の決済ツールの利便性や汎用性の課題を後回しにしてしまうと、意外に早いタイミングで敗者の憂き目にあうリスクが高いことは、中国のシェア自転車戦争の顛末が示唆してくれているように思う。

 オッフォとモバイクの必然の勝利と、今後も続くであろうアリババとテンセントの覇権争いの背景から日本企業が学ぶべき点は実に多い。