シェア自転車・戦国時代を勝利に導いたのは「モバイル決済ツール」の優劣

 数十社の運営会社が群雄割拠したシェア自転車戦国時代は、わずか2年間という短期間で終わり、冒頭に述べたように事実上、オッフォとモバイクの2つの企業だけが勝ち残った。

 中国政府の統計によると、すでに60を超えるシェア自転車の運営会社が、倒産もしくは行方不明になっているという(当然、保証金はお客さまに戻っていないという)。

 つまり、オッフォとモバイクが他の60社を次々に駆逐し、空いたスペースを埋め続けてきたのである。

 最近、筆者が宿泊した上海・淮海路近くのホテルの裏手は、古い公営住宅を撤去した広大な空き地になっていたのだが、部屋の窓からは倒産した運営会社のものと見られる大量のシェア自転車がうず高く積まれた「山」(「残骸」と呼ぶにはまだ真新しい)がいくつも見えた。

 もちろん、使われている自転車自体には、ブランドごとの機能的な差別点はない。

 それでは、勝者2社と敗者の六十数社の違いは何かと言えば、会員登録やシェア自転車の利用時に必要な「モバイル決済ツール」の優劣に他ならない。

 勝者2社が足掛かりとしたモバイル決済サービスは、オッフォはかの名高い「支付宝(Alipay)」。モバイクのそれは「微信支付(WeChat Pay)」である。

 言うまでもなく、支付宝はアリババ(阿里巴巴集団)が運営するネット通販サイト「タオバオ(淘宝網)」が、微信支付はテンセント(騰訊)が運営する中国版LINEと呼ばれる「WeChat」が、それぞれ背後にいる。(詳細については下図を参照)

オッフォとモバイクの比較。
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 周知の通り、タオバオもWeChatも、ユーザーベース数億人とも言われる巨大なオンラインのユーザーコミュニティを抱えているのみならず、ネット通販やSNSの枠組みを超えた、企業グループ傘下の多様なサービスによってアクティブユーザーを増やし続けている。

 もちろん、敗者の六十数社のサービスも「2大モバイル決済ツール」である支付宝や微信支付には対応はしていた。

 しかし、利用者のタオバオやWeChatというパワーブランドに対する絶大な信頼感に加え、モバイル決済ツールとしての利便性や汎用性という、巨大な資本力を背景にした差別された打ち出し(上表の「成功のストーリー」の欄の各3項目を参照)には太刀打ちができなかったと言えるのではないか。

負け組の中には支付宝(アリペイ)採用を訴求する事業者もあったが、結局、Ofo(オッフォ)に 駆逐された。

サービス同質化の中で生き残るため、決済手段が差別化の最大のドライバーに

 いささか穿った見方をすれば、上海のような中国の巨大都市で起きていたシェア自転車戦争の実態は、サービスの同質化が想定される視界不良な事業環境の下での、「モバイル決済サービス同士の利便性や汎用性の戦い」であったと解釈することもできるではないだろうか。