ヒトの仕事を奪うとき――タスク別予想

 現在開発が盛り上がっているのはあくまでも「特化型」のAI技術だが、深層学習以外の研究と組み合わせることで、これから「強いAI」の実現に向かっていくことは考えられる。

 しかし今はまだ、その道筋が見えてはいない。だから“シンギュラリティ説”を声高に訴えるような人がいたとすれば、残念ながらその人は技術的な認識が足りないか、あるいはそうすることによって単に何らかのメリットがある人なのだと思った方がよいだろう。

 興味深い資料がある。AI技術の進歩により、人間のすべての仕事が機械で全自動化できるようになるにはあと120年くらいかかるだろう、という研究者たちによる予測である。

 NIPS、CMLといった機械学習の世界最先端クラスのカンファレンスに2015年に参加した研究者たちに、機械が人間の仕事を代わりに行うことができるのがいつごろかを尋ねたアンケ―ト調査の結果をまとめた平均的な値だ。それぞれの回答結果の中央値を見ると・・・。

・洗濯物をたたむ作業には5年ちょっと
・小売販売業で約15年
・外科手術なら40年弱
・通訳は2024年ごろまでに
・AIがベストセラー本を書くのは2049年ごろまでかかる

 2015年に囲碁の対局でコンピュータがプロの囲碁棋士を破ったことが話題になったが、この囲碁についても、「AlphaGo」のように何千万局という自己対戦による学習をさせずに、人間と同じくらいの対戦回数だけで人間と同等レベルになるには、まだ10数年かかると出た(※)。
※「When Will AI Exceed Human Performance? Evidence from AI Experts 」 

 これらは研究者たちの予測をまとめたものであり、何らかの根拠のある数字というわけではない。だが、専門家たちはAIが人間の能力を超えるのにまだ100年以上かかると予想しているということを知れば、むやみに脅威論に振り回されることはなくなるのではないだろうか。

加熱するAI投資、見極めのコツ

 最後に、おまけとしてAI投資における優良スタートアップの見分け方を簡潔に紹介したい。AIブームは、投資の世界でも湧きかえっており、AI関連企業の株式への投資額は、2012年には5.8億ドルだったのが2016年には約10倍に。今年に入っても、米国では1億5000万ドルのAIベンチャーキャピタルファンドが立ち上がるなど、話題になった。

 だが、ここでもやはり冷静な目をもってもらいたい。AI関連スタートアップも含め、投資先をいかに選ぶか?

 比戸氏はまず「独自のAI技術を持っている、特許出願中、などと自社の強みをうたっている企業は、あやしい」と切り出す。今や、AIの進歩は日々、急速だ。数日単位で論文が出ては、その改善版が翌週には現れ、さらにまたそれを塗りかえるものが翌週に出てくるというスピーディな世界。

 「独自のAI技術」を持つスタートアップ企業があったとしても、世界中の何万人もの研究者たちがオープンな議論の場で磨いている技術に勝てるだろうか?いや、難しいだろう。そう考えると、このようなうたい文句には要注意、と分かるはずだ。

(第4回に続く)

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