あらゆるテクノロジーの進化がスピードを増す中で「日本は世界から取り残されている」「日本は遅れている」といった指摘を受けることも少なくない。そこで今回は、他国に比べて日本が遅れていると揶揄されている「キャッシュレス化」と「フィンテック」の現状について、NCB Lab.代表の佐藤元則氏に話を聞いた。
「ランチはカード不可」の店舗がたくさんある
クレジットカードをはじめ、デビッドカード、プリペイド型電子マネー、モバイル決済など、多様を極める現代の決済方法。さまざまな手段があるにも関わらず、日本でのキャッシュレス化は遅々として進まない。
「第一に、日本が現金主義の国であることが、カードや電子マネーなどの非現金決済の普及を阻んでいる大きな理由です」
佐藤氏によれば、日本で支払いの際に非現金決済を選ぶ割合は個人消費支出の25%(NCB Lab.調べ)にとどまっているが、キャッシュレス化が進むカナダやスウェーデンに至っては全経済活動における現金支払が約2%以下[*1]と、かなりの少数派とのこと。そのため、日本は先進国の中でもっともキャッシュレス化が遅れている国という烙印を押されている。
[*1]Payments Canada「Canadian Payment Methods and Trend Report」およびBBC「Why Sweden is close to becoming a cashless economy」より
また、日本でキャッシュレス化が進まない理由に、現金主義の他に消費者の多くが抱いている“クレジットカードの使いすぎ”に対する不安が影響しているという。
「クレジットカードに“借金”というイメージがある人が、日本人にはとても多い。そのため、支払い時に『クレジットで』と頼むのも気が引けてしまい、結局現金で支払ってしまうのです。SuicaやPASMOなど、使いすぎる心配がないプリペイド型電子マネーには“交通機関で使うもの”というイメージが強く、無意識に住み分けをしてしまっているようです」
クレジットカードは借金、電子マネーは定期、モバイル決済は使い方が難しそう(だから使わない)、などの消費者側の思い込みが、キャッシュレス化の遅れと直結しているというのだ。一方で、キャッシュレス化が遅れている原因はマーチャント(店舗)側にある、と佐藤氏は指摘する。
「店側がカードを受け付けていない点も、キャッシュレスが進まない大きな原因になっています。日本では、都市部であってもランチだけカードが使えなかったり、地方の老舗店ではそもそもカードが使えなかったり、ということはざらです」