「強いAI」が擬人化して人類を脅かすイメージ論

 現在、さまざまな分野で実用化に向け開発が進められているのが「タスク特化型」の人工知能だ。

 囲碁をする、車を運転する、といったように、特定の目的のために動くもので、それ以外の用途にはそのまま使うことができない。それに比べ「汎用」人工知能は、複数のタスクを幅広く実行することができる人工知能だ。

 この「汎用」AIが、人間の代わりにどんなことでもできるようになると、果てはさらに進化して人間の能力を超えるのではないかという脅威論にたどり着く。

 人工知能が人間の能力を超える時、あるいは人工知能が自ら、より高い知能を持つ人工物を創り出すようになることを指して「シンギュラリティ」「技術的特異点」という。

 汎用人工知能がいつか生まれるのか、シンギュラリティはおとずれる可能性があるのかどうか、といった話題もよく語られる。そして、汎用人工知能が意思を持った状態を指す「強いAI」と結びつき、SF映画に出てくるターミネーターやロボットのような擬人化されたAIが人類の存在をおびやかすというようなイメージが出来上がる。

 もう一度言おう。今の開発ブームで飛躍的に進歩しているAIの技術は、タスク特化型の方だ。これは言ってみれば、単に現実的なタスクで工学的に役立つ道具として編み出されてきたものであり、そもそも「強いAI」を目指して研究されてきたわけではない。

 だから比戸氏は「今のAIは、どうがんばっても人間の知能には届かないと考えている」と主張する。「我々の理解としては、少なくとも今の技術の延長上には、人間の知能を超えるようなAIはない」と。

 このあたりの混同を解きほぐすことで「過度な脅威論」と距離を置くことができるのではないだろうか。比戸氏はこうも付け加えた。「強いAIを実現するには絶対、深層学習とは異なる、強いブレークスルーがなくてはならない。だが、そのブレークスルーが何なのか、まだ分かっていない」。