イノベーションにより人間の仕事がなくなるという指摘は、実は最近に始まったことではない。
AIやIoTという言葉が広く世の中に出ていなかった2011年には、MITスローン・スクールの経済学教授エリック・ブリニョルフソンらが著書『機械との競争』(原題は『Race Against The Machine』。日本語版:村井章子訳 日経BP社 2013年)の中で「ICTの発達は、きわめて高いスキルをもつトップ1%のスーパースターと資本家に大きな利益を与える一方で、中間層の人々から仕事を奪い、失業を増加させ、収入を減らしている」と警鐘を鳴らした。
また、2014年、オックスフォード大学のAI研究者マイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員が発表した有名な研究がある。
『雇用の未来 コンピュータ化によって仕事は失われるのか』(原題は『THE FUTURE OF EMPLOYMENT:HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION? 』)では米国労働省が定めた702の仕事(職業)一つひとつが何%の確率でAIロボットに取って代わられるのかを調べ、今後10〜20年程度で米国の雇用者の約47%の仕事が消滅するリスクが高い、と主張した。

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人間にしかできない新しい発想や価値を生む以外の仕事は「シンギュラリティ」(Singularity: AIが人間の知性を超える技術的特異点。2045年頃と推察される)を迎える前に消滅してしまう可能性が高い、という考え方には一応の説得力がある。
残る方に分類されている仕事でも、例えば教師という仕事が「学びのパーソナル化」が進むことにより、「クラスで学科を教えること」から「生徒個々人の成長をサポートするファシリテーター」へと変わるようなイメージで、その仕事の質や内容ががらりと変わってしまう可能性も出てくるだろう。
【参考】IoTでお客様のエクスペリエンスが変わる6つの事例(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47632)