AIがもたらす創造的破壊:新たな職種や雇用が創出される

「ラッダイト運動」の後、手工業者・労働者たちが新たに中産階級という層に変化していったように、技術革新が、単純な仕事を人間から奪う一方で新たな付加価値を生み出す職業を世の中に生み出してきた、という歴史的な事実に注目すべきである。

 例えば、産業革命後、しばらくの間、機能性はありつつも、デザイン的な美しさに欠けていたり、他社の製品と似通って独自性に乏しかったりするプロダクトが多かった。

 機能性は満たしつつも、もっと造形的な美しさを追求しても良いのではという人々の欲求から、20世紀初頭になると「インダストリアルデザイン」という概念が米国や欧州で発達し(T型フォードはその典型である)、「デザイナー」という職業が生まれたのである。

 デザインが20世紀以降、ブランドの差別化のドライバーのひとつとして機能していることは疑う余地もない。

 同様の変化は現在進行形で起きている。

 デジタル化の急速な進展により、新聞や雑誌などのアナログのマスメディアが衰退する一方、インターネット関連のメディア(ウエブマガジン、企業のオウンドメディア、SNS、ネット通販サイトなど)が誕生し、ウエブマガジンの記者、ITエンジニア、ウエブデザイナー、ウエブ解析士など次々に新しい雇用を創出している。

 この変化は今後の企業経営者の取るべき戦略、つまり「ヒト・モノ・カネ」のリソース配分をどう考えるかという点で、具体的な方向性を示唆していると言えるだろう。

 それは、とりもなおさず、お客さまの気持ちの変化に寄り添う形で、コンピュータと人間との役割分担を考えることである。

 AIの導入で余剰になった人材リソースや資金をそこに重点投入して、お客さまとの接点で機能させて行くことが必要だ。

 銀行の窓口係、保険の営業職員や代理店の事務職員、携帯電話のショップの店員などはAIに仕事を奪われるのではなく、AIの導入によりその立ち位置がよりお客さまに近い場所へと変わり、AIができない「人間ならではの発想や価値の提案」をお客さま主語で専門的に担うことが求められるはずだ。

続く