近年、VR技術の発達とともに、視覚・聴覚に次ぐ第3の感覚として注目を集めている触覚。触覚技術をより多くの人に使ってもらえるようにと開発されたTECHTILE toolkit(テクタイルツールキット)のプロジェクトに携わった慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(以下、KMD)に所属する柴崎美奈氏(以下、柴崎氏)に話を伺った。

触覚技術を多くの人に提供するための「TECHTILE toolkit」

触覚技術を扱える人を増やそうと2011年に始まったプロジェクトのTECHTILE toolkitは、触感を記録・再生するためのツールキット。センサによって得られた触感(振動)をアンプによって増幅させ、アクチュエーターを通じて伝えるシンプルな仕組みとなっている。

本体1台、マイクパック(触感センサ)1個、振動パック(アクチュエーター)1個、電源(アンプシステム)1台のセットで、触感データの加工、記録、再生などを可能にしてくれるソフトウェア(maxmspパッチ)はTECHTILEのウェブサイトでオープンソースとして取得可能だ。

左:低周波をとりやすくした触感センサ 右:アクチュエーター
振動を増幅させるアンプシステム

簡単な操作で子供でも扱えるつくりということなので、実際に簡単な触感再生システムを作ってみた。紙コップを2つ用意し、触感センサと振動子をそれぞれに設置。アンプのスイッチをつけるだけで触感を再現できる。センサのついた紙コップに砂やビー玉を入れたら、振動子のついている空の紙コップで同じ触感を体感することができた。

紙コップの表面にセンサと振動子を設置すれば簡単な触感再生システムの完成

触感を“デザイン”するハプティックデザイン

TECHTILE toolkitのプロジェクトでは、アーティストやデザイナーなど、クリエイティブな活動に関わる人にキットを配布。そこで触感をコンテンツとして表現できる可能性を見出せたという。