今、都知事選が沸騰している。大きな争点の1つが“原発”。

 日本での反原発は、「ドイツを見習え」論がいまだに大手を振るっていて、「ドイツにできることは、日本にもできる」みたいな勇ましい話だが、もう一度考えてみてほしい。ドイツは、まだ何もしていない。原発は、16基のうち9基が動いている。原発を止めているのは日本である。

電気が余っても消費者の電気代が上がるという理不尽

ドイツ・バイエルン州グンドレミンゲンの原子力発電所は現在も稼働中(ウィキペディアより)

 ドイツは福島第一原発の事故のあと、脱原発を高らかに掲げ、将来、原発を止めた暁には、その分の電力を再生可能エネルギーで賄うという決意を示した。以来、頑張っているものの、しかし、現実は難しい問題が山積みという状態だ。

 確かに、再生可能エネルギーで発電できる電気の容量は抜群に増加している。ドイツに来れば分かるが、あちこちに風車が立ち並び、そして、多くの一般住宅の屋根にソーラーパネルが載っている。アウトバーンを走っていると、巨大なソーラーパークも目に飛び込んでくる。

 何故、こういうものが雨後の竹の子のように増えたかといえば、再生可能エネルギーで発電した電気が、20年にわたって全量、固定価格で買い取ってもらえるという素晴らしい法律があるからだ。

 土地と投資力を持っている事業者は、広大な土地にソーラーパネルを並べ、絶対に損をしない商売にニコニコ顔だ。

 そうするうちに、再生可能エネルギーでの発電容量は6万メガワットと膨らみ、ドイツの発電総量は17万メガワットを超え、ピーク需要時8万メガワットの2倍以上と、過剰施設になってしまった。

 ドイツの法律では、再生可能エネルギーの電気は、どれだけ余っていようが、すべて買い上げられることになっている。その買い取り値段は20年にわたって決められているので、生産過剰でも発電は止まらない。

 というわけで、風もあり、日照にも恵まれた日には、全発電量の70%分もの電気を、再生可能エネルギーが占めている。と言うと、聞こえがよいが、しかし、それが効率的に利用されているわけではない。

 なぜかというと、例えば北で生産された電気を、南の産業地域に運ぶ送電線が、ほとんど出来上がっていない。採算の合う蓄電技術もない。つまり、必要なところに、必要な電気が供給されているわけではないのだ。