2008年は「改革開放」政策の30周年に当たる年だった。この30年で、中国の実質GDPは年平均10%も成長した。なぜ「改革開放」政策によって奇跡とも言える高成長を成し遂げられたのか、総括する必要がある。

 これまでの種々の分析を総括すれば、市場メカニズムの導入と経済の自由化によって経済の高成長が成し遂げられたという指摘がほとんどである。特に、市場経済に合致する制度的な枠組みが構築されたことに注目しているようだ。

 これらの分析と指摘は決して間違ってはいない。だが、改革開放によって中国経済の構造のどこが変わったのか、それによってどのように経済成長が実現したのかについて、必ずしも明らかにされていない。

自由化によってアロケーションが合理的、効率的になった

 中国経済のみならず、どの国の経済についても、経済政策の有効性を検証するための重要なポイントがある。ヒト・モノ・カネという3つの資源のアロケーション(配分)が合理的かつ効率的に行われているかどうかを検証するのだ。

 例えば「改革開放」以前の、社会主義に基づいた計画経済はなぜ失敗したのか。その原因は、ヒト・モノ・カネのアロケーションが合理的・効率的でなかったことにある。

 計画経済の時代は、あらゆる資源のアロケーションが政府の策定する計画に基づいて行われていた。政府によって行われるので、アロケーションの合理性と効率性が担保されなかった。

 それが「改革開放」路線になってどう変わったのだろうか。

 北京大学の張維迎教授は、「改革開放」政策の最初の15年間は価格の自由化に終始したと指摘している。具体的に言うと、「ヒトの価格(賃金)」と「モノの価格(物価)」が自由化したということである。

 まず、国有企業を改革する一環として、年功序列の賃金体系が打破され、能力主義の基本原則が重視されるようになった。また、国家指導者に定年制を導入したのは、鄧小平の功績だったと言える。

 同時に、人材を登用する際は能力を総合的に評価するようになった。政府の部門間において人材を定期的に配置転換させ、能力を見極めたうえで登用するようになったのだ。人材資源のアロケーションの合理化こそ、経済発展の重要なエンジンの1つになっている。