バズワードとするのに人名は苦しいが、あちこちで出没するロバート・マンデルのことを書いておきたい。
経済学の(いわゆる)ノーベル賞を1999年にとった人。学術論文を1本も書かなくなって久しく、学者としては長いことリタイア状態なのに、今年になってからでも文字通り神出鬼没だ。
3月初め、キューバの首都ハバナにいてキューバ政府主催の国際経済会議(と、いうものがあるのです、今年は11回目)*1に出たと思ったら、直後にはカザフスタンの首都アスタナで、これも同国主催の国際経済会議(と、いうのも、あるのです、今年は2回目)*2に現れた。
こういう国々で主賓扱いされることそれ自体において既に、対米関係上の政治的含意がある。そこらに全くノンシャランなのがマンデルのマンデルたるゆえんで、それについては後述。
ともあれ米ドルが唯一の基軸通貨でなくなる日を見てシャーデンフロイダ*3に浸りたいと願う国家や集団にとって、77歳の経済学者は今やちょっとした教祖なのである。
人民元は日本円より重要――
先生の、いったいどういう主張が受けるのか。4月7日、ところ変わって香港で話した中身から想像がつく。「ナッシュ均衡」で有名なジョン・ナッシュと共に現れた講演は、大入りだったとか。
ここでマンデル教授は、SDR(特別引出権)をドルに代わる準備通貨にしろという本欄前々回が伝えた中国の提案を是認したうえ、一歩踏み込んでいる。ロイターが伝えるところでは、
“It's time for a change. The Chinese yuan is now the third most important currency in the world ... arguably more important than the (Japanese) yen.....”とのご託宣だったらしい。
人民元は円より大事で、ドル、ユーロに次ぐ第3の主要通貨なのだという。
だから先生は、ドル、ユーロ、円、ポンドで構成するSDRのバスケットをこの次見直す際(2010年中に実施の予定)、ドルの比率を下げ、ポンドはまるごとカゴから追い出すか、その比率をうんと下げるかして、隙間を人民元で埋めるべしと言うのである。
*1=11th International Encounter of Economists on Globalization and Development Problems
*2=Astana Economic Forum
*3=いい気味だと言いたい心理、schadenfreude
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