「中国株式会社」と「日本株式会社」

 両者は似ているように見えて、実は全く異なるシステムだ。まずは、類似点から検証しよう。

一見よく似た日本と中国の官僚制度

(1)共通点

 一見両者はよく似ている。いずれも自由市場経済システムの枠内で社会主義実現を目指すものだからだ。国家主導の管理経済の下で、官僚組織(中央官僚・共産党官僚)が圧倒的権限を持ち、結果的に現政権の維持に大きく寄与したという点でも、両者に大きな違いはない。

 それでも、細部は微妙に異なる。もう少し詳しく説明しよう。

 「日本株式会社」の原点は戦前の「新官僚」「革新官僚」が描いた理想社会だ。一種の社会主義的平等思想である。その理念は現在も心ある官僚たちに一部なりとも脈々と受け継がれているはずだ。この点については野口悠紀雄氏の名著『1940年体制』に詳しいので、是非一読をお勧めする。

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改革開放による変化で最も著しい変化は庶民の服装?(写真は成都のデパート)〔AFPBB News

 わが国で過去10年以上続いている行政改革をめぐる政官間の攻防は、この「日本株式会社」の弱体化・崩壊の過程であったとも言えよう。

 「中国株式会社」はむしろ逆だ。奇妙に聞こえるかもしれないが、「日本株式会社」が社会主義的平等を目指して作られたシステムだったとすれば、「中国株式会社」はその理想実現を放棄して出来上がったシステムである。

 毛沢東率いる中国共産党は革命後30年間、現実離れした社会主義化を推進し、ことごとく失敗してきた。その反動からか、1978年から資本主義を通じた社会主義実現(「改革開放」)が始まり、1998年にはその社会主義すら事実上放棄(「三つの代表」思想)された。

 21世紀に入り、今や共産党はその独裁体制の維持にしか関心がないかのようだ。誤解を恐れずに言えば、「中国株式会社」とはこうした共産党「生き残り」のための究極の手段であると思っている。