(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
「津波堆積物」という言葉を東日本大震災(2011)の前から知っていた人は少ないだろう。
津波堆積物は、地層に残された過去の大津波の痕跡だ。古文書だけではわからない過去の地震の様子を詳しく知り、将来の地震予測をするための有力な研究方法になっている。
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宮城県や福島県で津波堆積物を調べていた研究者たちは、大津波が内陸深くどこまで襲来するか、2010年までにほぼ予測できていた。いつ起きてもおかしくないとも考えていた。
その危険性を地域住民に伝えられていたら、東日本大震災の死者は減らせていたかも知れない。しかし、その知らせは紙一重の差で間に合わなかった。大津波の危険性をはっきりさせたくなかった東京電力の裏工作が、それを遅らせてしまったように見える。