昨年3月、東京電力福島第一原子力発電所で、汚染水から放射性物質を取り除く施設で任務に当たる作業員たち(写真:AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 東京電力が今週はじめにも一般家庭向け電気料金(規制料金)の値上げを経済産業省に申請する。値上げ幅は3割前後となる見通しで、国の審査を経て今夏までの料金引き上げを目指すという。

 食料品をはじめ物価の高騰が続く中にあって、電気料金の3割の値上がりは家計を直撃するはずだ。

 そこでどうしても腑に落ちないことがある。東電では昨年12月3日から、広報キャラクターの「でんこちゃん」を復活させたテレビCMを流していることだ。

値上げ申請のタイミングで「節電要請CM」とは

 そんなテレビCMにカネをかけるくらいなら、電気料金の値上げをなんとかしろ! と叫びたくなるのは、私だけだろうか。

 東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故とともに姿を消したはずの「でんこちゃん」は、11年ぶりの登場となる。15秒アニメで4パターンがあり、冒頭の画面にはわざわざ「おひさしぶり!」の文字を見せつけてから、節電を呼びかける。

 ロシアのウクライナ侵攻や円安の影響で、液化天然ガス(LNG)や石炭など発電に使う燃料の価格が上昇。昨年9月には上限に達して、電力供給にかかる費用が料金収入を上回って、電気を売れば売るほど赤字になる状態が続いていた。そんな中であえて節電のテレビCMに費用を注ぎ込む。