「中国革命の父」孫文(写真:アフロ)

(譚 璐美:作家)

 1月1日午前0時、南京市の中心地・新街口で1000人近い人々が警察の道路封鎖を破り、孫文の銅像に駆け寄って献花し、歓声をあげて新年を祝う風船を夜空に飛ばした。

 大商業地区にある新街口の万達広場は、中山路、中山東路、中山南路、漢中路が交差するロータリーで、ランドマークになっているのが孫文の銅像だ。YouTubeにアップした人によれば、「こんなことはこれまでになかったことだ」と言う。

 昨年末、中国政府のゼロコロナ政策に抗議して白い紙を掲げる「白紙革命」が起きて以来、中国各地で無言の抗議行動が相次いでいる。しかも中国政府が突如政策転換して「コロナ感染は軽度」だと言い出し、感染データの発表も取りやめてしまったことから、人々の怒りと不満はもう我慢の限界に達している。

 そうした中で、3年ぶりに市内へ繰り出した人々が、大みそかのカウントダウンに歓声をあげ、うっぷん晴らしをする姿は北京や上海でも見られたが、南京で起きたとなれば、話は別だ。

国の父

 そもそも南京は孫文と縁が深い。

 ご存知のように、孫文は1911年の辛亥革命を成功させて、清朝を崩壊させた革命家として有名で、長らく「国の父」と仰がれてきた。革命の成功後、中華民国(臨時)政府を樹立した際、首都と定めたのが南京だった。新街口のロータリーに立つ孫文像の背後には、広大な「大総統府記念館」があり、孫文が1912年に臨時大総統に就任・宣誓した歴史的な場所として、今では博物館になっている。