2022年11月5日、中間選挙を目前に控え、ペンシルベニア州フィラデルフィアで民主党候補者の応援演説をするバイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 バイデン政権への最初の審判とされる米国の中間選挙が、11月8日に行われる。バイデン大統領の支持率が低迷する中、民主党が優位を保っていた下院は、共和党が奪還することは確実と見られ、議席数を50ずつで分けあう上院でも民主党の苦戦が強いられる。そうなると、政権は民主党、議会は共和党のいわゆる“ねじれ”を生むことになる。

 ちょうど8年前の2014年の中間選挙で、実際に同じことが起きていた。当時はオバマ大統領の2期目で、残りの任期は2年を切っていたが、共和党が上院、下院とも過半数を上回り、政権はもはや“レームダック”と呼ばれることになった。

 その8年前の中間選挙が行われたその日、私はワシントンDCに入った。しかし、街は選挙結果に熱狂することもなく、むしろ予測の範疇であったかのように、いつもの火曜日の光景が繰り返されていた。

知られざる米国食肉産業のヘッドクオーター

 その翌日から3日間、アーリントンにあるホテルで大きなコンベンションが開かれていた。米国食肉輸出連合会(USMEF)の年に1度の総会だった。

 この米国コロラド州デンバーに本部を置く組織については、少し説明が必要だ。

 米国の畜産業には「チェックオフ・プログラム(Checkoff Program)」と呼ばれるシステムがある。たとえば牧場から牛を1頭出荷、屠畜する場合に、そこにわずか1ドルに満たないほどの課金をして徴収するもので、1986年に全米で法制化されている。その総額は年間に約8000万ドルになるとされ、この資金運営を任されているのが、「BEEF BOARD(ビーフ・ボード)」という組織だった。いわば、政府の監督下で全米の牛肉生産者を束ねる民間の総合団体である。

 これは牛肉ばかりではなく、豚肉の業界にも「PORK BOARD(ポーク・ボード)」がある。こちらも、豚1頭につき少額の課金からなる。