旧統一教会が名誉棄損で訴えた紀藤正樹弁護士(写真:つのだよしお/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 きょうから、秋の臨時国会がはじまる。岸田文雄首相は所信表明演説で、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の被害者救済に向けて法令の見直しにも言及するとされる。

 その一方で、統一教会は先月29日に会見を開いて、紀藤正樹弁護士をはじめテレビ番組に出演して統一教会についてコメントした弁護士3名とテレビ局を提訴すると発表した。それぞれの発言が名誉毀損にあたるとしている。いわば、統一教会の“逆襲”がはじまった中、法令の見直しはどこまで踏み込めるのか。

 もっとも、濫訴はいわゆるカルトの特徴であることは、ずっと以前から指摘されている。それにあたるかどうかは別として、まずは先月まで続いた私の訴訟について語ってみたい。そのほうが起きていることを理解しやすいはずだ。

筆者個人を訴えた麻原彰晃の三女

 私は、オウム真理教の教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚の三女から訴えられていた。かつて教団で「アーチャリー」と呼ばれ、自ら麻原の子であることを表明して、実名で本まで出版している人物だ。

 麻原元死刑囚には6人の子どもがいるが、このうち四女は教団とも家族とも縁を絶ちたいとして、彼女は父と母を推定相続人から排除することを横浜家裁に申し立て、2017年10月に認められた。推定相続人の排除は、被相続人の意思によって「著しい非行」や「虐待」を理由に相続権を奪うもので、一般的には親が子に対して(たとえば、暴力団の構成員になった息子に遺産がいかないように)申し立てることが多い。四女はそこまでして縁を絶ちたかった。

 そこで私は四女のインタビューを雑誌に掲載した。すると、これが名誉毀損にあたるとして、三女が妹の四女と私を訴えたのだ。しかも、事前に記事内容の訂正を求めたり抗議をしたりすることなく、また雑誌の発行元や編集部を訴えることもなく、いきなり執筆者の私に200万円、取材対象者の四女に300万円の慰謝料を請求して提訴したのだ。