中国政府は新たな人口センサスの調査結果を発表した。それによると、中国の総人口は13億3900万人と言われ、依然として増加傾向にある。だが、人口増加率はすでに低下しており、2015年頃になると、マイナスになると見られている。

 振り返れば、中国政府が人口の抑制に乗り出したのはおおよそ35年前からだった。それまで、毛沢東は英米に追いつき、追い越すために、人口を増やすべく出産奨励を呼びかけた。1950年代と60年代はベビーブームが続いた。しかし、当時、毎年権力争いを背景とする「政治闘争」が繰り広げられ、企業の生産活動は停滞状態にあった。国民経済は英米に追いつくどころか、破綻寸前にまで陥った。

 生産活動の停滞と人口の爆発がもたらす一番の弊害は食糧不足の慢性化だった。70年代に入り、マスコミでは社会主義の優位性について毎日のように宣伝されていたが、国民の生活レベルはみるみる低下し、食糧など生活物資の配給制の実施を余儀なくされた。当時の状況は今の北朝鮮とそっくりである。

 78年に復権した鄧小平は経済改革に着手する前に、まず人口抑制に乗り出した。少数民族は別として、国民の大多数を占める漢民族について「一人っ子政策」を導入したのである。

思いがけず高度経済成長に寄与した一人っ子政策

 もしも一人っ子政策を導入しなければ、今の中国の総人口は26億人を超えていると予想される。一人っ子政策によって10億人以上の人口増が抑制された計算になる。

 人口増加の抑制を目的とする一人っ子政策は、確かに人口増加の抑制に寄与した。同時に、思い切った人口抑制政策は、30年前に導入された「改革開放」政策の下での経済成長に大きく貢献した。

 一人っ子政策を導入する前の中国社会では、国有企業が社会保障機能を担っており、介護などは家族によって行われていた。1家族の子供の平均人数は4~5人に上るため、共稼ぎであっても、夫婦の給与所得では生活が困窮し、生活必需品以外の買い物や旅行などの消費はほとんどできなかった。

 一人っ子政策が導入されたあとは、共稼ぎの夫婦が扶養する子供の人数は1人となり、生活負担が大きく軽減された。その結果、80年代初期から働き盛りの夫婦には生活を楽しむ余裕ができて、消費振興にも大きく寄与した。