投票を呼び掛ける垂れ幕。アラバマ州のアマゾン倉庫(写真:AP/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムが米南部アラバマ州の物流施設での労働組合結成を阻止できた理由は、賃金や福利厚生など待遇面の良さと、同社による大々的な反対キャンペーンがあったためだと、米ニューヨーク・タイムズロイターが4月16日に報じた。

多くが前職よりも高賃金

 6年間、地元紙の記者だったグラハム・ブルックさん(29歳)は、アマゾンでの報酬はそれまでよりも1時間当たり1.55ドル(約170円)多いことに満足しており、今後も昇給が期待できると話している。

 アマゾンが保障している15ドルの最低時給(約1630円)は、同倉庫で働く多くの人にとって前職と比べ高い賃金で、会社側を支持する動機が十分にあったという。

 また、カーラ・ジョンソンさん(44歳)は昨年(2020年)にアマゾンで働き始めたが、そのわずか数カ月後、医者から脳腫瘍を告知された。「アマゾンでは雇用初日から医療保険が適用されるので、治療費を保険で賄うことができた」と話している。

大々的な反対キャンペーン

 アラバマ州の物流施設では、21年2月に労組結成の是非を問う郵便投票が始まった。21年4月9日に全米労働関係委員会(NLRB)が集計結果を発表した。従業員数約5800人の投票総数は約3000票。賛成738票に対し、反対が1798票と過半数を上回り、組合結成は大差で否決された。

 同施設では一部の従業員が賃金などの待遇改善を求めて労組結成を呼びかけていた。これに対し、会社側はウェブサイトやパンフレットなどを通じて「結成するなら組合費なしで」とする反対キャンペーンを展開。「年間500ドル(約5万4000円)の組合費を払うくらいなら欲しいものを買った方がましだ」と主張した。

 アマゾンは、施設内のトイレの個室に至るまで、反対票を投じるよう呼びかける張り紙を掲げた。従業員らにはテキストメッセージを送信し、団体交渉は結果的に労働者の損失につながるとし、結成を支援していた小売り産業の労組「RWDSU」を非難。「労組の代表者らは組合費から毎年10万ドル(約1100万円)以上を使って乗用車を購入している」などと批判し、労組結成にメリットはないと主張した。