ミッドウェイ島を発進したB-17の爆撃を高速で回避する空母飛龍。このような水平爆撃で洋上の艦艇に命中弾を与えることはむつかしかった。写真:TopFoto/アフロ

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

なぜ、兵装転換にこだわったのか?

前回より)ミッドウェイ海戦の経過をたどってくると、一つの疑問が脳裏をよぎる。なぜ日本軍は、兵装転換にこだわったのか? 魚雷でミッドウェイ島を攻撃しても効果がないことは、素人考えでもわかる。

 ただ、雷撃機(魚雷を積んだ攻撃機)を後回しにしても、爆弾を積んだ爆撃機だけでも、先に発進させられなかったのだろうか? あるいは、陸用爆弾を積んだ攻撃隊を、そのまま米艦隊に差し向ければよかったのではないか? しかし、ことはそう簡単ではなかった。

 まず押さえておきたいのが、飛行機の種類だ。この当時、空母の艦上で使っていたのは、艦上戦闘機、艦上爆撃機(艦爆)、艦上攻撃機(艦攻)の3種類。艦爆は急降下爆撃、艦攻は雷撃(魚雷攻撃)と水平爆撃を担当する。

 次に爆弾の問題。敵の艦船を攻撃するとき使う徹甲弾は、甲板を貫いて内部で爆発することによって、船体に大きなダメージを与える。ただし、陸用爆弾とは信管の構造が違うから、徹甲弾を地上目標に落としても不発になってしまう。

 日本艦隊としては、ミッドウェイ島にある滑走路を破壊したいのだが、徹甲弾ではこれが達成できない。逆に、陸用爆弾で軍艦を攻撃した場合、甲板上は破壊できても撃沈はむつかしい。米空母を撃沈できないのでは、作戦の目的が達成できないことになる。

 いちばん問題なのは、艦攻の使い方だ。長大な魚雷を抱えて飛ぶ艦攻は、急降下爆撃機として作られている艦爆より、機体そのものが大きく重い。地上目標を攻撃する場合は、艦爆より大きな爆弾を搭載できるが、水平爆撃という使い方になる。