今回の大地震と原発事故の直後、大勢の中国人が日本から脱出したことはご存じのとおりである。

 都内のコンビニで働く顔なじみの王さんはあっと言う間に姿を消し、居酒屋で働いていた愛想のよかった李さんもいなくなった。語学学校からは中国人講師が一斉に帰国してしまった。「彼らはいつ戻ってくるのか」と、ため息をつく経営者もいる。

「いきなり帰国なんて無責任じゃないか!」

 横浜中華街からも多くの中国人が逃げ出した。横浜に古くからいる中国人経営者と、出稼ぎに来た中国人労働者がもめた。

「老板(社長)、俺、明日帰ります」
「明日だと? あまりにも急じゃないか」
「でも、航空券買ったんです」
「もういい、お前はもう二度とここには帰ってくるな!」

 「地震直後、シャッターが開いている店は全体の3分の1程度だった」と、横浜市在住の会社員は話す。

 中国人だけではない。アジアの他の国から日本に働きに来ていた労働者も引き揚げた。東京のある零細企業の経営者から悲鳴が上がった。

 「この忙しいさなかに、あいつらは一体何を考えているんだ!」

 同社の臨時工であるバングラデシュ人が、原発事故に怯えきって帰国してしまったという。

 「仕事を残して逃げるつもりか! 残された我々はどうなるんだ」「いきなり帰国なんて、あまりにも無責任じゃないか」と、日本人社員は臨時で雇ったバングラデシュ人を取り囲んだという。年度末の繁忙期に「それはないだろう」というのが日本人社員の言い分だ。

 しかし、バングラデシュ人にとってここは祖国ではない。単なる出稼ぎ先の1つにすぎないのである。しかも、年金、医療保険などの保障もなく、福利厚生すら対象外の臨時工だ。お互いに利用し合ってきた関係に「義理」は求め難い。

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 一方で、中国人を雇う別の企業経営者は「彼らの帰国理由」が腑に落ちないと言う。