「どうしてこんなタイミングで・・・」――韓国政府関係者は、原発故障の一報を聞いて絶句したという。
東日本大震災から1カ月経った4月12日。釜山市の弁護士会は、市内にある古里(コリ)原子力発電所1号機の運転停止を求める仮処分を釜山地方裁判所に申請した。
古里原発1号機は、韓国初の原発だ。米ウエスティングハウスが原子炉を、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が発電機を建設し、1978年に運転を開始した。
原発の設計寿命は30年だが、韓国政府は3000億ウォンをかけてメンテナンス(保守・修理)を実施、10年間の運転延長許可を出していた。これまでは地元でも大きな反対運動は起きていなかったが、福島の原発事故で状況は一変した。
「福島の原発と同様に、老朽化している古里原発は大丈夫か」という声が日増しに強まっていった。
特に、古里原発は住所も釜山市内で、市の中心部からわずか20キロに位置する。釜山周辺の人口は360万人で、日本からの原発関連ニュースが伝わるたびに、不安はどんどん増幅していった。
地元の弁護士会は、「古里原発1号機は老朽化しているうえ、交換していない部品も多く、事故が起きる危険性が高い」として即時運転停止を求めた。
韓国で最も古い古里原発1号機が緊急停止
この仮処分申請が大きなニュースになったまさにこの日の夜、古里原発1号機で故障が起きた。電源供給系統の遮断機で故障が起き、原発が自動停止したのだ。
「それ見たことか」。故障を機に韓国内では、原発への不安感が一気に高まった。
「一般家庭で考えれば、ヒューズが飛んだようなもの。故障は軽微で数日で復旧できる」
古里原発を管理運営する韓国水力原子力は、3日後の15日に再稼働させると発表した。確かに、故障は軽微だったのかもしれない。しかし、韓国メディアは連日のように日本の福島第一原発事故を大々的に報じ、韓国でも原発に対する恐怖感は高まっていた。