11月14日、マレーシアの国防省を視察するインドネシアのプラボウォ国防相。イスラム保守・急進派の大物で大統領選では穏健派のジョコ・ウィドド大統領と争ったが、第2期ジョコ政権で国防相に起用されている(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアにおいて今、イスラム教を巡る駆け引きが活発化している。

 イスラム教徒の間で、保守的で、時に急進的ともいうべき「イスラム化」を担ってきたグループや一派に対し、穏健なイスラム教徒が一斉に反発し、保守的思想や急進的行動へと振れていた振り子を引き戻そうとしているのだ。

 その旗振り役となっている人物こそ、再選を果たし10月23日に第2期内閣を発足させたジョコ・ウィドド大統領である。さらに、前面に立って陣頭指揮しているのが元国軍副司令官で新内閣の宗教相に抜擢されたファフルル・ラジ氏だ。

 イスラム教穏健派と、急成長・台頭した保守派・急進派の対峙は2018年から始まった大統領選で一気に表面化し、瞬く間にインドネシア全土に拡大した。

 しかし保守派・急進派の守護神に祭り上げられていた大統領候補のプラボウォ・スビアント氏が2019年の投票で惜敗したばかりか、選挙中に散々非難、中傷、こき下ろした対立候補のジョコ・ウィドド氏が大統領として発足させた第2期新内閣で、プラボウォ氏自身が国防相として入閣したことで完全に潮目が変わった。

「緑狩り」旋風への危惧

 こうした動きについて、インドネシア研究家で立命館大学国際関係学部の本名純教授は12月6日にジャカルタで行った講演「第2期ジョコウィ政権の政治~展望と課題」の中で、「今後インドネシアでは緑狩りが強まる」との見方を示した。