東日本大震災は、全世界に大きな衝撃を与えた。もちろんロシアにもだ。ロシアの政府や国民は今まで見られなかったような深い思いやりの気持ちで、日本国民に哀悼の意を捧げている。同時に、もしもロシアで同じような災害が起きたら、日本のように社会は秩序を保っていられるのかという心配もわき起こっている。
モスクワの日本大使館の入り口や鉄製の垣根では、厳粛な表情で花束を備えるモスクワ市民の姿が見られた。ロシア人が外国の大使館に献花したのは、9.11事件以来初めてである。
幼少時に広島で被爆した佐々木禎子という少女が、白血病を治すために1000羽の鶴を折ったという有名な話がある。ロシアの学校でその話を教わったという生徒が自分で鶴を折り、「日本の子供たちに手渡してください」と日本大使館の職員にお願いする感動的な場面もあった。
3月29日、ロシア国立交響楽団が日本の被災者のためにチャリティーコンサートを開催した。セルゲイ・ラフマニノフのボカリーズ歌曲の演奏中には、ホールのあちらこちらから女性のすすり泣く声が聞こえた。指揮者は、拍手をしないで被災者に思いをはせるよう呼びかけ、観客は静かに退場していった。
日本大使館には、次のような多数の激励と称賛のメールが送られてきている。「われらの友達よ、頑張ってくれ」「日本人の辛抱強さに感激!」「日本は絶対に復活する」「日本には底力があるぞ! がんばれ! 我々が救援に行くよ」「震災に屈服せず、尊厳に満ちた姿で復興しようとしている日本人は全世界の模範である」
ロシアと日本の相互不信も破壊されてなくなった
石原慎太郎・東京都知事は、東日本大震災が「天罰」だと言ったそうだが、ロシア正教のある聖職者は、「自然に対して傲慢になっている人類を神様が戒めるために、科学技術で最も発展している日本を選んで、天罰を下したのだ」とコメントした。ただし、その聖職者は国民から轟々たる非難を浴びた。
「今回、日本が体験した悲劇のおかげで、地球がいかに狭いかを痛感した。これを機に日本とロシアは一層親密な関係を築けるだろう。日本の皆さんは家屋を破壊されたが、日ロ両国民のお互いの不信感や警戒心も破壊されてなくなったのである」という声も聞こえた。
2010年秋頃から日ロ関係は徐々に悪化していた。はたして大震災を機に好転していくだろうか。あくまでも雰囲気だが、この震災でロシアの日本に対する感情は一変してしまったように思える。