中国の雑誌に、「百度(中国の検索エンジン)では、『慶祝日本大地震』というキーワードで検索されるサイトが2892万件に上った」という記事が掲載された。

 日本で東日本大震災が発生すると、中国で盛り上がったのは、それを悼む声ではなく、むしろ「祝福」する声だった。

 確かに中国のネット上の書き込みをスクロールすれば、「日本はこのまま沈没する」「繰り返し地震が起こる日本で再建は無駄」といった書き込みが無数に出現する。

 そうした状況を見かねてか、「この時期に牙をむき出しにして日本に復讐しようとするのは、中国にとって不利になる。経済大国2位の中国は、日本救済においても責任ある態度を取るべきだ」と新聞や雑誌で呼びかける学者もいた。

 学者が言う理由は次の通りだ。「この千載一遇の巨大地震を利用すれば、上海万博よりも少ない資金で欧米の中国脅威論を払拭できる」。要するに「日本を助けることで、中国は立派な国だと思われる」ということだ。

 今でも、多くの中国人の心を支配するのは過去の歴史なのである

会議の席でみんなが佐藤さんを悼んで泣いた

 だがその一方で、日本の被災地でのある出来事が報道され、中国人の日本人観を揺さぶっている。

 地震発生から数日後、中国の新聞やテレビ、ネット媒体では、次のようなニュースが伝えられた。

 「20人の中国人研修生を避難させた佐藤充さん、直後に津波に呑まれる」――。

 宮城県女川町の水産会社、佐藤水産の佐藤充専務が、地震発生直後、「津波が来るぞ」と20人の中国人研修生を寮から高台に避難させた。佐藤さんは研修生たちの無事を確認した後、家族を捜しに寮の方に戻っていった。だが、津波に呑み込まれて帰らぬ人となった。

 中国の中央テレビは3月21日、佐藤さんの特集番組を放送した。

 取材班は、中国に帰ってきた研修生たちにマイクを向ける。テレビ画面に映し出された研修生は、「お米は足りているか、トイレットペーパーは不足していないかと、いつも気にかけてくれた」と佐藤さんを振り返り、その死を悼んだ。