ソニーのハワード・ストリンガー会長が椎間板ヘルニアの緊急手術のために東京を去ったのは3月10日だった。

 翌日飛行機が米国に到着し、同氏が最初に受けた電話は、日本が過去最大級の地震と津波に見舞われ、ソニーが通常のように機能していないという事実。6万人の従業員が危機に直面しているという報告だった――。

 米ニューヨーク・タイムズがストリンガー会長に電話取材し、地震発生当時の同氏の状況を伝えている。

「1つの企業が想定する範囲を超えていた」

ソニーが新経営体制へ、ストリンガーCEOが社長兼務へ

ソニーのハワード・ストリンガー会長〔AFPBB News

 それによると、ストリンガー氏はすぐに上級管理者と連絡を取り、日本で大規模地震発生時に備えた緊急対策が実施されることを知った。そして同氏はそれを指揮するために手術を翌日まで延ばしたという。

 しかしストリンガー氏はやがて被害の甚大さを把握するようになる。

 同氏は「災害の規模が、ソニーが用意しておいた緊急対策の内容をはるかに超えていることが明らかになった。地震と津波に続き、原子力発電所の緊急事態と、次々に発生する新たな問題は、1つの企業が想定する範囲を超えていた」と話している。

 東北地方はソニーの重要な生産拠点。ブルーレイディスク工場と研究開発拠点があり、施設は浸水被害を受け、約1100人が上階に避難した。

 ソニーの中鉢良治副会長ほか2人の幹部が、従業員の救援に注力し、翌日の12日にすべての従業員を救った。一方、米国時間の12日に行われたストリンガー氏の手術も無事成功したという。

 巨大地震の発生から10日が過ぎ、ソニーは徐々に落ち着きを取り戻している。しかしストリンガー氏は今、様々な問題に直面しているとニューヨーク・タイムズは伝えている。

 ソニーは世界に240の事業所を持っており、収益の80%以上を日本国外から得ている。同氏は世界のオペレーションから求められる本社機能と、日本国内から求められる人的資源のバランスを考慮しなければならない。