福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発)の爆発を受け、「在日中国人が逃げ出している」とささやかれている。これは決して流言ではない。機を見るに敏な一部の中国人はすでに日本からの脱出を始めている。

 上海の虹橋空港では3月12~14日、出国者の3倍の数が入国。中国への帰国者が急増した。浦東空港でも11~15日にかけて、1万人の中国人が帰国している。

 3月12日の時点で4578人のツアー客が日本に滞在していたというが、多くが旅行を中止し、帰国の途に就いた。旅行客のみならず、留学生やビジネスマン、長期滞在者もまた日本を後にした。

 上海への帰国を目前にした中国人はこう話す。「おそらく報道と実際の状況はまったく違うはずだ。福島の原発事故はチェルノブイリの第2弾だ。いや、それ以上にひどいだろう。こうなれば逃げるしかない」

 政府発表など信用しない中国人ならではの、先手先手を打つ行動力であるが、それ以上に、日本政府の対応には厳しい批判が寄せられている。

 「菅総理の記者会見(15日)はまずい。『最大限に努力してもらう』など、今さら言うべき言葉ではない。これまでの努力は最大限ではなかったのか」(日本のシンクタンクに所属する中国人研究員)

 「日本の政治家は政治闘争ばかりに明け暮れている。だから、こうした状況でも国民に関心が向けられない」(日本の大学に所属する中国人職員)

 少なくとも中国政府はせっぱつまった状況でこんなお粗末さはさらけ出さない。2010年に中国では青海省の地震、甘粛省舟曲県の土石流災害、上海市内ではマンションの大火災と、災害が立て続けに起こった。土石流災害が起こったのは8月8日だったが、その翌日には温家宝首相が現場を訪れ、その被害状況を確認している。人命救助を最大の目的とした彼らの行動は早い。

日本の不動産はもう怖くて買えない?

 今回の大地震と事後の対策を見るにつけ、「中国の方がマシだ」と祖国を見直した在日中国人は多いことだろう。