2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の翌年、“脱原発”の旗振り役のように祭り上げられながら施行された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)。これが今、大きな転換期を迎えている。

巨額な再エネ買取費用

 再エネ(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)から作られた電気は、FIT認定を受けたものであれば、大手電力10社が長期間かつ高値で買い取る。その買い取りに要する財源は、われわれ一般消費者の電気料金に“再エネ賦課金”として上乗せされている。

 19年度では、再エネ買取費用の総額は3.6兆円。このうち、化石燃料から再エネに置き換わることで支払わなくて済む化石燃料代を差し引いたものが、再エネ導入のための純粋な追加負担金だ。これが“再エネ賦課金”で、その総額は2.4兆円となり、標準家庭(電気使用量260kWh/月)で月767円、年9204円となる見込みである。

 FIT認定案件が今後とも順次稼働し始めるため、再エネ買取費用も、再エネ賦課金も、当面は毎年上がり続ける。その前提に立てば、再エネ買取費用の総額は、30年では3.7~4.0兆円にまで増える見通しだ。

 社会保障・少子化対策の財源を確保するための消費増税(税率8%→10%)が今年10月に予定されているが、その増収分は5.6兆円と試算される。つまり、消費税1%分は2.8兆円となる計算だ。

 これと比べれば、再エネ買取費用・賦課金がいかに巨額であるかが分かるだろう。この再エネ買取に起因する膨大な国民負担をどう抑制・削減していくかが、今後の大きな政治課題となっている。