タイガーマスク現象の波及効果で、このところ児童相談所や児童養護施設に関する報道が格段に増えた。

 たまたまテレビで目にしたのだが、山口県下関市の施設に40年間にわたって寄付を続けた人についての特集は、考えさせられるところが多かった。

 その人は、「三太郎」という差出人名で、月に300円から始まって、毎月一定の金額を郵便で送ってきた。本名は明かさず、住所も記されていない。その代わりに毎回丁寧な手紙が添えられている。

 いくつかが紹介されて、季節の移りゆきや、当たり障りのない訓示のようなものだが、いずれも気持ちのこもった、とても良い手紙だった。ただし個人的な情報を洩らさないように細心の注意が払われていて、文面からすると男性らしいが、それ以外のことは分からない。

 寄付の額は徐々に増えてゆき、やがて月によっては1万円が送られてくるようになった。しかし、2年ほど前に不意に途絶えて、それ以降は寄付も手紙も届かなくなったという。

 40年というのだから、贈り主が30歳の時から始めたとしても70歳になっている。最後のものとなった手紙には「この便りを最後にすることにしました(中略)私の人生のひとつのけじめにしました」と記されており、もしかすると体の具合が悪くなったのかもしれないと、施設の職員や子どもたちは贈り主のことを心配している。

 それにしても40年というのは大変な長さで、贈られた金額も合わせれば相当だが、施設の職員からは、寄付自体よりも、見守り続けてくれる人がいることへの感謝の念が繰り返し述べられていた。

 手紙は施設内に貼り出されて、いつも読むのが楽しみだったと話す施設出身の女性もいて、匿名ながら、寄付者と受け手の間に確かな交流が行われていたことがよく分かった。

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 もう1つ、これも新聞とテレビの報道で知ったのだが、林恵子さんという女性がいる。