世の中はNHKニュースから夕刊紙に至るまで、相撲の八百長の話題で持ちきりだ。

 それほど重大な問題とも思えない話がこのように多くの人々の関心を引きつけるのは、そこに日本社会によくある(誰でも心当たりのある)構造が見られるからだろう。

 官民関係でも八百長は広く見られる。最も典型的なのは建設談合で、落札率(落札価格/予定価格)が95%を超えるケースは珍しくない。

 ただ、建設談合は何度も刑事事件になり、業者の手口も巧妙化して、あまり露骨な八百長は見られなくなった。昔のゼネコンのようなあからさまな談合が行われているのが電波行政である。

八百長で落札業者や電波の免許を決める官民関係

 2007年に2.5ギガヘルツ帯の「美人投票」(比較審査)が行われ、2つの枠にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、ウィルコムの4グループが申請した。

 美人投票の結果、KDDIとウィルコムのグループが当選したが、その「比較審査の結果」を見て関係者は驚いた。ウィルコムが「継続的に運営するために必要な財務的基礎がより充実している」という項目で最高の「A」評価を得て、「B」のドコモを上回ったのだ。

 経営危機が表面化して外資系ファンドに買収され、資金的な不安がささやかれていたウィルコムが、日本の全企業の中でも最大級の利益を上げているドコモより「財務的基礎」が充実しているというのは何を基準にしたのか、関係者は首をひねったが、その理由は2010年になって判明した。

 アナログ放送が終わったあとのVHF帯で行われる予定の「携帯マルチメディア放送」で、ドコモ・民放グループが、KDDI・クアルコムと最後まで争った。

 この時、「ドコモが民放を支援するのとバーターで、2.5ギガヘルツ帯はウィルコムに譲った」と当時のドコモ幹部が証言している。

 2.5ギガヘルツ帯で誰もが本命だと思っていたドコモが落選したのは、その代わりにVHF帯の周波数をドコモに与える密約による八百長だったのだ。

 2年も経たないうちにウィルコムの経営は破綻し、「財務的基礎」が極めて脆弱だったことが判明したが、その窮地を救ったのがウィルコムを買収したソフトバンクだった。