ホスニ・ムバラク大統領の退陣を求める大規模デモが続くエジプトで、現地時間1月27日夜、突如としてほぼすべてのインターネットと携帯電話のサービスが止まったと米欧のメディアが報じている。
米ウォールストリート・ジャーナルによると、英ボーダフォン・グループのビットリオ・ コラオ最高経営責任者(CEO)は28日にダボスで記者会見し、エジプト政府からサービス停止の要請を受けたことを明かした。「サービス停止はエジプトでは合法のため、我々にはどうにもできない。政府が方針転換するよう希望する」と述べている。
同社は29日になってウェブサイトで声明を発表。「ボーダフォンだけでなく同国でサービスを提供しているすべての通信事業者には選択の余地はない」としている。
フランステレコムも同国の通信事業者と共同でサービスを提供しているが、ウォールストリート・ジャーナルによると、政府当局が携帯電話とインターネットサービスともに「遮断の措置を取った」と話している。
インターネット史上前代未聞
米国のネットワークセキュリティ会社によると、現地時間27日の午後10時12分に政府系通信会社のテレコムエジプトのサービスが停止し、数分後にほかの事業者もこれに追随、10時25分に同国はインターネットから「消滅」した。
民主化運動を弾圧するためにネットを妨害する動きはこれまで他国でもあったが、エジプトの場合、その規模や範囲、同時性といった点でインターネット史上前代未聞だと複数のメディアが伝えている。
例えば、イランでは2009年の大統領選後の反政府運動で、人々がミニブログサービス「ツイッター(Twitter)」やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「フェイスブック(Facebook)」で連絡を取り合って大規模なデモ活動を展開した。
この時イラン当局はネットアクセスにフィルターをかけたり、検閲などは行ったもののインターネットすべてを遮断することはなかった。