「人民解放軍はなぜ米中軍事交流を中断したと思うか?」
記者からこう問われた国防総省高官は、「その質問は中国側に聞いてほしい」とそっけなく答えた。1月18日からの胡錦濤訪米直前、ワシントンで行われた記者会見でのやりとりだ。
今回の訪米で米中軍事交流再開が確認されたことは誰でも知っている。だが、考えてみれば、交流が中断された理由の方はあまりよく分からない。そこで今回は、冒頭の米国防総省高官に代わり、記者の質問に勝手に答えさせていただく。
公式理由は台湾への武器輸出
当時の報道を総合すると、中国側が今から1年前に対米軍事交流を取り止めた理由と背景は次の通りだ。もう一度、冷静に読み返してみよう。
○2010年1月29日、オバマ政権は台湾に対する武器供与を米議会に正式通告した。
○これに対し、1月30日、中国外交部の何亜非次官はハンツマン米駐中国大使を召致のうえ厳重に抗議するとともに、中国は「強烈な憤慨を表明」する。
これは「米中の様々な交流・協力関係に極めて深刻な悪影響」を及ぼす、2009年2月に再開した「米中軍事交流は中断」する、台湾へ武器を輸出する米国企業に「制裁」を課すと述べた。
○さらに何次官は、「米国による台湾への武器売却の危険性」と中国の主権に関わる「台湾問題の敏感さ」を強調し、この問題が「両国の軍関係に深刻な影響」をもたらし、「『台湾独立勢力』に誤ったシグナル」を送り、「台湾海峡の平和安定」を損ねると述べた、のだそうである。
こじつけに近い中断理由
どうもよく分からない。米国の「台湾への武器売却」は米国内法である「台湾関係法」に基づく措置で、今に始まった話ではない。
既に2008年10月にはブッシュ前政権が、総額65億ドルの武器を台湾に売却する計画を議会に通告している。
当時も中国は対抗措置として米中軍事交流を中断したが、オバマ政権発足後の2009年2月には交流を再開している。中国は当時から米国の武器売却計画があることを知っていたはずであり、中国側の説明には全く説得力がないのだ。