菅首相が1月24日に行った施政方針演説によれば、国づくりの第一の理念は「平成の開国」だそうである。しかし、日本の情報通信は、国を挙げて鎖国に走っているようだ。
最高裁は1月18日に「まねきTV」、20日に「日本デジタル家電」によるテレビ番組のネット配信サービスを「違法」とする判断を下した。
これまで日本では、この種のサービスは原則禁止だったが、この2社だけが知財高裁(東京高裁の知的財産権を扱う法廷)で「合法」との判決が出て、テレビ局(NHKと民放キー局5社)が上告していた。この上告に対して最高裁は知財高裁へ審理を差し戻した。
細かい法律論を省いてビジネスパーソンにとって重要な部分だけ紹介すると次のようになる。
この2社のサービスは、テレビ番組を個人の録画機(あるいは中継器)でその所有者が見るものだ。だが、最高裁は、自分の機材で自分が見るだけでも自動「公衆」送信にあたり、しかも、その利用者だけではなく装置を設置した業者も自動公衆送信の「主体」だ、と判断した。
これは通常の日本語の定義を大きく逸脱するもので、影響は大きい。
例えばマンションの共同受信施設でテレビを受信して各部屋に配信する場合も公衆送信にあたり、違法になる恐れがある。データセンター(企業のサーバを提供する業者)を使ってテレビを社内に配信するのも違法で、データセンター業者も摘発されるリスクがある。
問題は、テレビ番組だけではない。音楽配信についても同様の判決が確定しているので、個人ユーザーが自分のCDをデジタルデータにして会社のサーバに送って出先で聞くと、「公衆送信」として違法になる。この場合、会社が違法行為の「主体」と判断されるので、会社が家宅捜索を受けるかもしれない。
今回の最高裁の一連の判決は、ごくわずかに例外として残っていたネット配信の道をふさぎ、第三者による映像や音楽のネット配信は全面禁止という方針を出したものだ。