財務省はもはや「スーパー官庁」とはいえない

 森友学園をめぐる決裁文書の改竄問題で、財務省が内部調査の結果を発表し、佐川元理財局長など20人を減給、戒告などの懲戒処分にした。これは1998年の「過剰接待」事件以来の大規模な処分である。大阪地検は起訴を見送ったが、財務省の組織としての責任はまぬがれない。

 森友・加計学園のような小さな問題が1年以上も国会で騒がれる事態は異常だが、この背景には安倍政権の危機管理のまずさとともに、財務省の力が落ちたという背景がある。いまだに財務省が「スーパー官庁」だと信じている人が多いが、よくも悪くも今の財務省にそんな力はない。ここに至るまでには、自民党と財務省の長い戦いがあった。

財務省は拒否権をもつ「裏の内閣」

 霞が関には、全体を統括する官庁がない。形の上では首相官邸(内閣官房)が中枢だが、スタッフのほとんどは出向で求心力がない。その代わり実質的な中枢の役割を果たしているのが財務省主計局だが、法的には財務省に予算編成権はない。

 憲法第86条では「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」と定めており、予算編成権をもつのは内閣だが、そんな要員がいないので財務省が代行している。

 主計局の査定の大部分は前例を踏襲するが、新たな歳出の増加を伴う政策には、財務省が拒否権をもっている。つまり日本の政治には政策を決定する内閣と、それに拒否権をもつ財務省という「裏の内閣」があるわけだ。

 高度成長期には大蔵省は自民党政権と一心同体であり、成長による果実の分配という共通利益で結びついていた。バラマキを求める政治家に対して財政規律を守ることが首相の責務とされ、大平正芳首相は「大型間接税」を導入しようとして総選挙で惨敗し、竹下登首相は消費税の創設に政権の命運を賭けた。