中国四大奇書『水滸伝』に登場する花和尚・魯智深(ろちしん)をご存知だろうか? 俗名を魯達といった彼は、貧民をいじめる悪徳長者・鎮関西を義憤のあまり殴り殺して逃亡。官憲をあざむくために出家して法名魯智深を名乗り、やがて梁山泊に入って六十二斤の鉄禅杖を振るい獅子奮迅の大活躍をするようになった――。という話である。魯智深のキャラクターは、前近代の中国で寺院が前科者の経歴ロンダリングの場になっていた事実を反映したものらしい。
そして、実はこういう話は北宋時代から約1000年を経た現代でも相変わらず存在する。今年(2018年)1月、広東省広州市番禺区の公安局が長年にわたり追い続けていたニセ和尚を、江蘇省宿遷市泗陽県まで出向いて逮捕したのだ。彼の名は力天佑といい、16年前に番禺区内で強盗殺人を犯し逃亡。世を忍ぶ仮の姿として僧侶に身をやつしていたのであった。
力天佑は広州きってのお尋ね者の1人であり、2012年に広州市公安局が指名手配犯の顔写真を使って作成した「この顔見たら110番トランプ」でハートの5番を与えられたほどの札付きだった(なお、このトランプは米国がイラク戦争中にサダム・フセインをジョーカーとして作成した「お尋ね者トランプ」にアイディアを得たそうである)。