中国軍事力の拡大に備えようとするのは結構。しかしその場合、北の防備はもう無用、重視すべきは今や南西諸島方面だとハナから決めてかかっていいものだろうか。

 それから日本の考える洋上交通路(シーレーン)とはいつも中東発インド洋経由で北上してくるものだけれど、中国にとって事情は同じだろうか。人民解放軍海軍が防衛守備したいであろう近未来のシーレーンとは、ほかにないのか。

国後、択捉を持たない不利

 向こう10年、中国の交易がどう発展するかを想像することで、上の問いへの示唆を得ることができる。それは同時に、我が国安全保障環境がどれほど一変するかに思いを巡らせてみることともなる。

パリ電力需要に匹敵するウラン産出鉱山

カナダ北部、マクリーン・レイクにあるウラン鉱〔AFPBB News

 結論から言えば、国後、択捉ほか北方四島に寸土も持ち得ていないことは、日本の安全保障上ますますもって不利に働く。

 他方、琉球弧とは、チリから南太平洋の島嶼国フィジーを結んだ線の延長上に存することへ注意を向けねばならない。順に見ていこう。

 いま述べた北方の動きを展望する際手がかりとなるのが、あるカナダ企業の株価である。

カメコ社株価のただならぬ急伸

 カメコ(CAMECO)という資源銘柄の株価が、ここへきて急伸している。カナダ・サスカチュワン州最大の都市サスカトゥーンに本社を置く同社の株価(終値、カナダドル)は、7月5日時点で21.71ドルだった。それが12月13日には39.15ドルまで8割上昇した。

 12月2日、同社は年間の配当を43%増やすと発表し、投資対象としての魅力を一層増した。

 カメコとは、仏アレバ(AREVA)と並ぶ世界有数のウラニウム産出・精製企業である。一次ウラン生産量の世界シェア(2009年)はアレバの17%に対し、15.8%。売上高は2009年に23億1500万米ドルを記録し、対前年比6%の伸びを示した。