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トランプ次期大統領が投げかけたもう一つの大きな課題は、日米安保体制の見直しだ。戦後60年間の日本の基礎は、日米安保と共にあり、それ抜きに現体制を維持することはできない。慶應義塾大学名誉教授・島田晴雄氏は、今こそ日本が目を覚まし、自分の足で立っていくにはどうしたらいいかを、全力で考えるべき時が来たと述べる。

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皆さんは世界史をどう教わりましたか。私が習った世界史は、まずギリシャから始まりました。次にローマ、その次に暗黒の中世です。その後が、暗黒の中世を破ったルネッサンスです。その次に、イギリスの産業革命です。そしてその次に来るのが、パックス・アメリカーナです。ギリシャから始まる私たちの世界史が究極的に学ぶのは、パックス・アメリカーナ、すなわちアメリカを中心とした世界平和体制です。何のことはない、日本で教えている世界史は、アメリカを誉めるだけの世界史です。

私はその後、勉強を重ねて、アラブ諸国に行きました。アラブ諸国に関する本を何十冊も読んでから行ったのですが、それらを読めば読むほど、恥ずかしくなりました。アラブから見たら、西洋文明は後から来た野蛮な国の文明なのです。例えば、私たちは数字を書きます。ローマ数字はマッチ棒のような形ですが、私たちはアラビア数字を使っています。あれはどこの国が開発したかといえば、イスラム帝国です。首都はバグダッド、今のイラクです。この帝国が、当時アラビア海からインド洋あたりまでを支配していました。

数字もそうですし、天文学も数学も、全部イスラム帝国の時代にできています。数千年の人類の文化で最も進んだのは中東、アラブだということを彼らは信じているから、誇り高いのです。今はぐちゃぐちゃになってしまいましたが。

インドもそうです。中国もそうです。インドでお釈迦様が悟りを開いた時、中国には孔子がおり、(後に弟子が彼の話を)漢字を使って『論語』を書きました。その後、中国では2000年間も同じものを勉強していたのです。だから非常に誇りがあります。戦後の日本人は、そういったことを教わっていません。私たちが行ってきたのは、ギリシャからパックス・アメリカーナ、全て日米安保体制の中での教育です。それを超えないと、日本は自分の足で立てません。自分の頭で考えません。

トランプ氏はそんなことを意図していないと思いますが、彼に一つだけ感謝することがあるとすれば、私たちに反省を促したことです。あの人が言っている暴言の趣旨だけ注目すると、私たちにとって重大な反省材料が見えてきます。次の日本を構築するために、私たちは、安保体制下でずっと眠らせていた思考を、今から呼び覚まさなくてはいけません。自分の目を覚まして自分の足で立つためにはどうしたらいいかを、自分の頭で真剣に考えなければいけません。このための貴重な機会を、トランプ氏は提供してくれていると思います。

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トランプのアメリカと日本の課題~安保体制を見直す時
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