パキスタン国境から約5キロ離れたアフガニスタンのナンガハール州に、大規模な麻薬製造工場があった。10月28日、この工場を破壊する多国籍の軍事作戦が実行された。

 作戦には、アフガン内務省軍、米国特殊部隊、ロシア連邦麻薬取締局の工作員が参加した。3カ月かけて極秘で作戦の準備が進められた。ヘリ攻撃機9機と支援機9機、約70人の軍人、工作員が工場を破壊し、10億ドルに当たるヘロイン1トンを押収した。

 麻薬密売業界に与えた損害は莫大なものだ。だが、この作戦には、それをはるかに上回る意義があった。

 つまり、ロシアと米国、NATOとの共同作戦が、史上初めて行われたのである。30年前を思い出せば、まさに隔世の感がある。 

ロシアの情報に基づいて麻薬製造工場を破壊

 ロシアは、2009年2月に、アフガニスタンにおける協力協定をNATOと結んだ。この協定によって連合軍は、アフガニスタンに駐留している部隊にロシア領土を経由して非軍事装備品を供給することが可能となった。

 パキスタン経由の供給ルートが危険に満ちていること、キルギス・マナスにある米軍基地の閉鎖をキルギス政府が最終決定したこともあり、米国にとっては非常にタイミングのいい協定であった。

 その後、2009年12月には、NATO事務総長のラスムセン氏がモスクワを訪問。ロシア政府に対して、今回の麻薬工場破壊作戦への協力、ヘリ機や燃料の提供、アフガン警察の教育と訓練などを要請した。

 ロシア連邦麻薬取締局が保有している麻薬製造工場の情報は、高い価値がある。今回、実行された作戦は、ロシアが提供した情報に基づいたものだ。ロシアの情報によれば、破壊された4つの工場は実は氷山の一角で、バダフシャーン州に400の麻薬生産工場が設置されているという。