11月はパリの写真月間。それでなくても、いつもたくさんの写真展が開かれているパリが、さらに無数のと言ってもいいほどの展覧会で満たされる。
パリの写真月間、特に話題なのはラ・フランス
美術館から街角のギャラリーまで、その規模は様々だが、中でも特に話題の写真展の1つが、国立図書館で1月まで開催予定の「LA FRANCE(ラ・フランス)」。
フランスで活躍する現役写真家の中でも大御所の、Raymond DEPARDON(レイモン・ドゥパルドン)氏が撮ったフランスの風景写真展である。
展示は、四角の大きな箱のような会場の白い壁面に、写真と写真の隙間は恐らく10センチもないというくらいの密着度で、1.60×2メートルというビッグサイズの作品が横一線にずらりと取り囲むように並んでいる。
フランスの風景と言うと、パリのモニュメント、はたまたモンサンミッシェルなどの歴史的建造物に代表される、いわゆる絵葉書のようなものを想像されるかもしれない。
しかし、この36枚の展示作品には、一枚としてそういう風景がない。では、なにが被写体になっているのかと言えば、田舎道のロータリーだったり、時代遅れのような肉屋や車の修理屋、あるいは、文字が1つ欠けた野っぱらの看板など。
映画監督としても有名な写真家
つまり、言ってしまえば、何の変哲もない、フランスの地方にはありがちな日常を切り取って見せているのである。
この写真家の名前を聞いて、おや? と思った方があるかもしれない。
と言うのも、彼が手がけた映画『LA VIE MODERNE(ラ・ヴィ・モデルヌ)』、邦題『モダン・ライフ』が先頃、日本でも公開されており、映画監督として、この名を耳にしていたとしてもおかしくない。
つまり、彼は写真家であると同時に、ドキュメンタリータッチの作品を得意とする映画人でもあるのだ。