9月24日、沖縄の那覇地検は、海上保安庁の巡視船に衝突し逮捕された中国漁船船長・セン(「譫」のつくり)其雄容疑者を処分保留で釈放することを決定した。
日中間の対立はこれで「幕引き」ということになるのだろうが、そこには何かしらの政治取引が行われたことが窺われる。
準大手ゼネコン、フジタの社員4人が軍事管理区域立ち入り等の理由で中国当局に拘束されたという報道があって間もないだけに、「人質交換」の形で、日中当局者間で妥協が図られた可能性もあり得る。
また、国連総会出席のため訪米中の菅直人首相、前原誠司外相がそれぞれオバマ米大統領、クリントン国務長官と会談し、オバマ大統領との間で日米同盟の重要性を確認するとともに、クリントン長官からは「尖閣諸島は日米安保が適用される対象」であるとの発言を取り付けた。
さらにゲーツ国防長官も記者会見で「日米同盟における責任を果たす」と述べるなど、米国のバックアップを受け、尖閣諸島問題で日本のポジションが強化されたことも、日本政府の「政治決着」を後押ししたのかもしれない。
中国漁船は「逮捕されるため」にぶつかった?
尖閣諸島海域での中国漁船の領海侵犯と海上保安庁の巡視船への「体当たり」による「公務執行妨害」は、どうも「仕組まれた」案件のように思える。当然ながら、仕組んだのは中国側であり、船長の「逮捕」も計算の上だったと思われる。想像をたくましくして分析してみたい。
想像による分析だから、もちろん確証はない。しかし、尖閣海域での中国漁船の違法操業があとを絶たず、沖縄タイムズ(9月9日)によれば、この事件が起きた7日には、日本領海に30隻が侵入していたとされる。
その数に対して海上保安庁の巡視船では対応に手が回らず、違法操業の漁船を見つけては警告し、退去を求めるという対応をしてきたようだ。
要するに、中国漁船は違法操業だけでは逮捕されることはなかった。巡視船への「体当たり」は、「逮捕されるため」の行動と見られても仕方のないものと言える。
漁業で生計を立てている普通の漁民が、わざわざ逮捕されるような無謀な行動を取るはずがない。だとすれば、海保に逮捕された漁船とその船長を含む乗組員は「仕立てられた」ものと見るべきだろう。