菅直人首相の政策は「1に雇用、2に雇用、3に雇用」だそうである。民主党の代表選挙での彼の演説によれば、「雇用を生み出せば、経済の成長につながる」というのだが、これは順序が逆である。
小沢一郎氏が指摘したように「雇用を増やすためには、まず景気を良くしなければならない」。雇用が成長を生み出すのではなく、成長が雇用を生み出すのだ。
成長を生み出すには経済の生産性を上げるしかない
では、成長はどうやって生み出すのだろうか。
小沢氏の言う補正予算は、税金で雇用を生み出すことになるが、これは将来の需要を先食いするだけだ。「エコポイント」は自動車や家電の売り上げを増やしたが、終わると売れ行きが落ちるのを見ても分かるように、財政政策は本質的な成長には結びつかない。
成長率を持続的に引き上げるためには、経済の生産性を上げるしかない。「生産性」と言うと抽象的だが、個々の企業で言うと「収益力」である。
収益力は「資本効率」と「労働生産性」に分けることができる。
資本効率を表すROE(株主資本利益率)について日本と海外を比較すると、日本のROEは欧米諸国の半分以下で、労働生産性はOECD加盟の30カ国中で20位、G7諸国では最低である。
勤勉な日本人の労働生産性が、あのイタリア人より低いのは不可解かもしれないが、これは労働者が怠けているからではない。労働市場が硬直的で、生産性の低い部門から高い部門へ労働者が移動しないからだ。
OECDもたびたび指摘するように、日本の製造業の労働生産性上昇率はOECD平均より高いが、非製造業の生産性が低い。サービス業の生産性上昇率は、1980年代の3.5%から2000年代には0.9%と急激に低下している。
このような経済の実力を示す潜在成長率は、0.5%以下と推定されている。これが成長率の上限なので、どんな景気対策を出そうと金融緩和をしようと、これ以上の成長は実現できない。成長しなければ企業収益も上がらず、労働需要は増えない。したがって雇用が増えるはずもない。