丹羽宇一郎氏にとっては痛烈な洗礼になった。
駐中国大使としての実質的初仕事が、真夜中に呼びつけられて出かけていき、抗議を承ることとはあいなったのだ。
原罪を背負い込んでしまった丹羽駐中国大使
こういう異例な扱いを呑んだことは、この先丹羽大使の在任中、前例として生き続ける。
丹羽氏はいわば、「原罪」を背負い込んでしまった。
そもそもの初発行動で、丹羽氏は対応をひどく誤った。
尖閣諸島久場島(くばじま)北北西、日本領海内で操業中の中国漁船を、海上保安庁の巡視船が発見、体当たりして来るのを取り押さえたのが、9月7日午前の出来事だった。
それから丹羽氏は、中国外交部に引っ張り出され続ける。
最初に呼びつけたのは宋濤という人物で、これは外交部に12人いる次官級役人では序列7位の人だ。
会わなくてもいい下級官僚の呼び出しに応じた愚
公式バイオグラフィーによると、対日関係はその職掌に入っていない。「領事」とか「監察」という、あさっての方向のことを担当していると、説明にはある。
日本の報道では「次官」に呼ばれたことになっていたけれど、甚だミスリーディングである。日本の外務省には次官というと1人しかいないからそれなりの人かと思いがちだが、実態は上の通りだった。
もっと奇異なのは、その翌日の8日、今度は1つランクが下がり、胡正躍という「部長助理」に呼びつけられ、これにも応じて抗議を承りに出かけたことである。