丹羽宇一郎氏にとっては痛烈な洗礼になった。

  駐中国大使としての実質的初仕事が、真夜中に呼びつけられて出かけていき、抗議を承ることとはあいなったのだ。

原罪を背負い込んでしまった丹羽駐中国大使

中国漁船員14人帰国へ、船長は引き続き取り調べ

尖閣諸島で中国漁船を拿捕したことに抗議する中国・重慶市の市民運動家たち〔AFPBB News

 こういう異例な扱いを呑んだことは、この先丹羽大使の在任中、前例として生き続ける。

 丹羽氏はいわば、「原罪」を背負い込んでしまった。

 そもそもの初発行動で、丹羽氏は対応をひどく誤った。

 尖閣諸島久場島(くばじま)北北西、日本領海内で操業中の中国漁船を、海上保安庁の巡視船が発見、体当たりして来るのを取り押さえたのが、9月7日午前の出来事だった。

 それから丹羽氏は、中国外交部に引っ張り出され続ける。

 最初に呼びつけたのは宋濤という人物で、これは外交部に12人いる次官級役人では序列7位の人だ。

会わなくてもいい下級官僚の呼び出しに応じた愚

 公式バイオグラフィーによると、対日関係はその職掌に入っていない。「領事」とか「監察」という、あさっての方向のことを担当していると、説明にはある。

 日本の報道では「次官」に呼ばれたことになっていたけれど、甚だミスリーディングである。日本の外務省には次官というと1人しかいないからそれなりの人かと思いがちだが、実態は上の通りだった。

 もっと奇異なのは、その翌日の8日、今度は1つランクが下がり、胡正躍という「部長助理」に呼びつけられ、これにも応じて抗議を承りに出かけたことである。