2人一組で掛け声を掛けながら枕木を持ち上げるOJT生とミャンマー人エンジニアたち(筆者撮影、以下同)

動揺測定

 朝8時15分、車掌が列車から身を乗り出して駅舎に向かい大声で何か叫んでいる。と、ロンジー姿の女性が1人走り出てきて列車の最後尾に駆け込み、ほっとしたようにはにかんだ。ほぼ定刻通りに汽笛が鳴り、列車がヤンゴン駅を出発する。

 ここミャンマーでは、2013年8月からより良い鉄道サービスと安全な輸送を実現するために保線技術を伝える協力が行われている。

 普段はJR東日本の委託を受け、東北地方の各地で保線作業の最前線に立っている日本人技術者たちが1~2カ月ずつ交代でやって来ては、蒸し暑い雨期の日もぎらぎらと太陽が照り付ける乾期の日も、ミャンマー鉄道のエンジニアたちと一緒に汗を流しながら、毎日、枕木交換や砂利の敷き直しの方法を実地に指導しているのだ(前回参照)。

 今日は2週間に1度の動揺測定の日。現場作業が休みの土曜日に実際に列車に乗り、作業済みの区間とまだ終わっていない区間の揺れの大きさを振動計で客観的に測定して保線作業の効果を確認している。

 列車が上下左右に揺れるたびに振動計の針が激しく振れ、ロール状の紙に出力される波動の山も極端に大きくなる。日本人専門家たちは、体が一瞬椅子から浮き上がるほど激しい揺れにも動じず、手馴れた様子で振動計をのぞき込んでは記録をつけている。

 いつもの測定に比べて車内がにぎやかなのは、OJT生として2014年2月よりこの地に派遣され、海外の鉄道コンサルティング業務を研修中のJR東日本の若手社員が4人、一緒に乗車しているためだ。列車が大きくバウンドするたびに、「こんなに揺れるの?」「ありえない!」「おぉっ、あぶねぇ」と大きな声が上がる。