オランダとドイツの国境にある道路標識。どちらも「新しい道」という意味で同じ道路を示すものだが、上はオランダ語、下はドイツ語で記されている(写真提供:筆者、以下特記のないものは同様)

ドイツへ殺到する国境近くのオランダ人

 国境が目に見えるところにない島国、日本。一方、ヨーロッパ諸国はお互いが国境で接し合っている。

 越境すれば、そこは「異国」である。使用言語はもちろんのこと、文化も違い、場合によっては異なる人種の住む国がすぐ隣にある・・・。それをことのほか意識するのは自分が島国の出身者だからなのかもしれない。

 ヨーロッパ大陸で生まれ育った人たちにしてみれば、国境の存在を気にしないのが普通である。しかし、その近辺に住み生活を営む人たちにとっては、国境はある意味で特別な存在になりうる。国境は、アイデア次第でビジネス展開を可能にする場所だからだ。

 1985年6月に締結されたシェンゲン協定により、EU圏内では国境での審査なく自由に出入国が可能になった。この協定は、フランス、ドイツとベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)が中心となり調印されたもので、その目的は国境の通行自由化にある。

 それまでは、国境(付近)で義務化されてきた検問を廃止する代わり、不法移民管理や犯罪防止を徹底する条件の下で、EU諸国内の自由移動を保障するために締結された協定なのだ。

オランダとドイツの国境付近にあるガソリンスタンド。オランダの黄色いナンバー車が目立ち、連日超満員である。(画像提供:Ad.nl)

 その結果としてEU圏の人びとは、各国間を(ほぼ)検問なしで行き来できるようになった。また、国境ならではのビジネスの自由化も可能になった意義は大きい。

 たとえば、オランダ東南部からドイツ北西部にかかかる国境周辺の高速道路や一般道は、特に乗用車の交通量が多いことで知られる。それも、その90%はオランダナンバーだ。それはなぜか。