「金正日総書記が貴国を訪問中というのは本当なの?」

 「いや、分からない」

 「えっ、でもお前担当部署にいるんだろ?」

 「正直、俺も韓国メディアのニュースで初めて知ったんだから」

全く突然の訪中だった北朝鮮の金正日

金総書記が胡主席と会談、「次世代」のための友好関係維持を強調

中国・長春で会談する金正日総書記と胡錦濤国家主席(2010年8月30日放映の中国中央テレビ局のニュース映像より)〔AFPBB News

 8月26日午後、中国共産党と北朝鮮労働党間の政党交流を担当する中国共産党対外連絡部に勤める知人に聞いてみたが、確認は取れなかった。

 新華社通信、人民日報など党機関紙でそれなりのポストを務める幹部に同じ質問をぶつけてみたが、「上からは何の根回しもない。具体的な指示もない」の一点張りであった。筆者のアンテナにもなかなか引っ掛かってこない。

 その日、筆者自身が研究員を務める北京大学朝鮮半島研究センターにこもり、情勢を見つめ続けた。国内外の断片的な情報を追いかけてみる。

 中国東北部吉林省吉林市、長春市などで厳戒な警備が敷かれている。

 今回、金総書記が前回5月上旬の訪中時に使った「新義州―丹東」ではなく、「満浦―集安」ルートを使ったのは、「新義州が昨今の水害に見舞われ、総書記の交通手段としてとても使える状況ではなかったから」(中朝関係筋)だという。金総書記が中国にいることは間違いなさそうだ。

 どうもしっくりこない。金総書記は3カ月前に訪中したばかりだ。なぜこの時期に再訪中するのだろうか。

 将軍様の健康に問題が生じ、体の具合を診るため、急遽中国行きを決定したのか。後継者問題、水害後の経済援助要請、韓国艦沈没事件後孤立した情勢の打開・・・。様々な理由が考えられる。