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 「中国市場では単一品目でも戦える」「オフラインが未熟な産業に、相対的にオンラインの機会が多く存在」──後編では、21cake(オンラインケーキ販売)の事例が、私たち日本企業に与えてくれる示唆について考えてみます。

市場を創出しながら、成長を遂げていく21cake

Legend Capitalの朴焌成パートナー(右)とDI上海高級創業経理の板谷俊輔(文中の写真・画像は全てドリームインキュベータ提供)

DI 板谷:前回は、主に2008〜09年の投資検討時における21cakeの状況と、そこから浮かび上がってくるユニークなビジネスモデルについて伺いました。当時から既に5年以上の時間がたっていますが、現在、21cakeはどのような状況にあるのでしょうか?

LC 朴:投資後、必ずしも「100%好調だった」とまでは言えません。ただ、それでも21Cakeの成長速度は、素晴らしいものだと言っていいと思います。

 まず販売地域は、北京・上海2か所だったのが、北京・上海・天津・杭州・蘇州・無錫・広州・深センの8箇所にまで増えています。工場は、北京・上海・広州の3箇所に抑えたままで、です。

DI 板谷:読み通りに「規模の経済」が効く形になってきています。

LC 朴:さらに、北京では、「電話注文→オンライン注文→工場化」という試行錯誤の中での立ち上げでしたが、上海・広州では、最初から、その完成されたモデルを横展開することができました。

DI 板谷:実際のところ、どれくらいのスピードで成長しているのでしょうか?

LC 朴:参考までに、売上高は2009年に比べて2014年には6倍に増えています。 毎年50%以上の成長を維持していることになります。

DI 板谷:至って順風満帆に見えますね。

LC 朴:ただ、一方で、私たちの予想を超えて競争が激しくなったのも事実です。まず21Cakeが北京で成功を上げ、2010年に満を持して上海に進出した際には、既に多くの競争相手が上海地域で待ち構えていました。

 ウェブサイトを模倣するだけなら良い方で、ケーキの包装、食器の形、さらには、ブランドの形まで模倣した偽物業者が乱立し始めました。その中でも、極めつけは「22Cake」という会社です。

DI 板谷:こうなると、1cakeから30cakeあたりまで調べてみたくなりますね(笑)。

LC 朴:また、この頃、外部のプロフェッショナル人材の採用を始めましたが、家族経営的な雰囲気に馴染めず、入社数か月での退社も相次いでしまっていました。