これまでの筆者の記事(「中国の『三戦』に立ち向かう方法」「中国が開発する超音速ミサイルの脅威」など)では、主に中国を中心に抑止と防衛の問題を論じてきた。しかし、ここで視点を変えて、米国の動向を見てみよう。米国では現在、将来にわたって米国の軍事的な優位を保つための革新的な戦略が登場しつつあるのだ。
それが、米国防総省が2014年11月中頃に公表した「防衛革新イニシアチブ」(DII:Defense Innovation Initiative)である。
このタイトルだけでは何のことだか分からないが、その中で特に注目すべきは、米国で今回3度目の採用とされている、「第3の相殺戦略」(third offset strategy)と呼ばれる要素である。
この「第3の相殺戦略」は現在、米国の安保専門家の間で、米国が21世紀においても軍事的な優位性を維持するための取り組みとして非常に注目されている。この米国の取り組みは、日本自身の防衛を考える上でも大変参考になるものである。今回はこの米国の新戦略の内容について注目してみたい。
米国が軍事的な優位性の維持を目指す方針「DII」
11月15日、米国防総省は「防衛改革イニシアチブ(DII)」と呼ばれる方針を公表した。その際に 公表された覚書によると、DIIの内容は概ね次のようなものとなっている。
【DIIの要旨】
「国防総省は、米国が21世紀も軍事的な優位性を維持・促進する上での、革新的な方法を追求する全省的なイニシアチブを開始する。現在、米国は鍵となる戦闘領域における従来の優位を失う時代に入りつつある。米国は予算難などの国防資源の制約の中でも、自身の軍事・技術的な優位を維持し、拡張する方法を見つけなければならない。米国は来るべき数十年に備え、戦力投射に関する優位性を保つために、第3の相殺戦略を明らかにする。具体的には、以下の領域において革新を推進する。
・リーダーシップの育成
・新しい長距離射程の研究開発(R&D)計画プログラム
・ウォーゲーム
・新しい作戦構想
・これには政策、取得、技術後方、インテリジェンス、統合参謀本部、各軍の省などの多くの国防総省の部局が関与
・外部の評価基準や内部の再検討を通じたさらなる効率性と効果の追求の継続
全ての領域はR・ワーク(Robert Work)国防副長官によって監督される。このイニシアチブは21世紀における米国の指導力の基礎を構築することになる」
以上の内容を少し解説すると、DIIは次のような背景をもって登場してきたイニシアチブである。