米国発の金融危機が全世界に広がり、2009年の先進国の経済成長率(実質GDP伸び率)は軒並みマイナス成長になると見られている。

 その中で、中国経済は世界経済を牽引する新たなエンジンになると期待されている。だが、楽観視はできない。世界銀行や国際通貨基金(IMF)などの国際機関は、2009年の中国経済成長率は7%程度と予測している。

 中国にとっては8%成長が政策目標のボトムラインである。雇用創出のためには、最低でも8%成長が必要になるためだ。

 言い換えれば、中国経済にとっての7%成長は実質的にはマイナス成長となる。現在、中国政府は「保八」(8%成長を死守)のキャンペーンを繰り広げている。その背景には、実際の成長率が8%以下に転落してしまうと、社会が大きく不安定化するという恐れがある。

景気減速をもたらした人民銀行の失政

 2003年に胡錦濤政権が誕生して以来、中国政府は一貫して投資過熱を警戒し、景気引き締め政策を実施してきた。

 具体的に言うと、主要都市では不動産開発がブームとなり、地方政府は製鉄所やセメント工場などを相次いで設立した。スケールメリットの大きいこれらの産業は、効率を高めるため必然的に大規模な工場になるうえ、環境にも悪影響を及ぼし得る。

 2005年、中央政府は、地方政府が設立した中小規模の製鉄所などの免許を取り消し、投資過熱を引き締める姿勢を強めた。胡錦濤政権が目指そうとしているのは資源効率を高める集約型の「科学的発展観」である。

 しかし本来ならば、企業の投資はその資本コストと期待収益によって決まるものであり、政府が強引に介入すべき問題ではない。事実、政府が非効率な投資を引き締める姿勢を強めたあとも投資過熱が収まらない。

 2007年下期に入り、原油高と穀物価格の上昇により突如としてインフレーションが再燃した。人民銀行(中央銀行)はインフレの原因を十分に分析せず、マネーサプライを抑える景気引き締め政策を実施した。

 物価上昇の原因は原油高と穀物価格の上昇にあったが、人民銀行は何を勘違いしたのか商業銀行による信用創造の抑制に乗り出した。その結果、マクロ的に流動性不足は起きていないものの、企業の経営現場では資金繰りが難しくなり、2008年5月以降、企業の倒産が相次いだ。

 2007年まで5年連続して2桁成長が続いた状況から、そろそろ景気が調整局面に入るだろうと見られていた。それにもかかわらず、人民銀行は景気を押し下げる政策を取ったのである。

 したがって、2008年の景気減速は米国発の金融危機の影響によるものではなく、人民銀行の政策の失敗によるものと理解される。

8%成長の死守に向けた政策転換

 2008年9月、米国のサブプライム問題は金融危機に発展し、世界全体に広がった。にもかかわらず、人民銀行の政策トレンドはインフレ抑制に軸足を置いたままだった。リーマン・ショックやアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の実質的な破綻を受け、10月30日、人民銀行はようやく問題の深刻さを認識し、商業銀行に対する貸出総量規制を解除した。だが、時期はすでに遅すぎたのかもしれない。

 2008年第3四半期の経済成長率は2007年の11.9%に比べ9.0%と大きく下落した。このまま、何もしなければ、第4四半期は8%台の成長となり、2009年は国際機関が予測する7%前後の成長になる可能性が高い。