「たばこを長い間吸って肺癌になった。たばこと肺癌は因果関係がある」というデータはある。しかし、果たしてその責任はたばこ会社にあるのか――。

 韓国ではこれまでに、たばこ会社を被告にした4件の訴訟があったが、すべて原告側が敗訴した。理由は、肺癌は生活習慣や家族病歴などもあるので、喫煙のせいだという根拠が不足しているというのだ。

大手たばこ会社を訴えた国民健康保険公団

韓国国保、たばこ3社を提訴 医療費負担で賠償請求

首都ソウルでたばこを手に街を行くスモーカー〔AFPBB News

 しかし、今年4月にまた新たなたばこ訴訟が始まった。これまでの4件はすべて個人が国家とたばこ会社を訴えるという構図だったが、今回は全く違う切り口である。

 国家機関と言うべき国民健康保険公団(NHIS)が韓国内の主なたばこ会社を相手に訴訟を起こしたからだ。

 被告になったたばこ会社は、KT&G、フィリップモリス・コリア(PMK)、ブリティシュ・アメリカン・タバコ・コリア(BATK)、ブリティシュ・アメリカン・コリア製造(BATKM)の大手4社。残念ながらと言うか幸いと言うか日系のJTKはマーケットシェアが少なすぎるということで除外されている。

 KT&Gは、今でこそ民営会社だが、その前身は韓国たばこ・人参公社で、たばこと高麗人参を専売する公的機関だった。

 たばこは人に害を与え、人参は薬となるということで、相反するものを販売していると批判されたためか、民営化してから名前をKT&Gに変えた。韓国では圧倒的なマーケットシェアを占めるたばこ会社である。

 PMKとBATKは言わずと知れたたばこのグローバル企業で、世界的に有名である。こんな大手を相手にいくらNHISといえども勝算はあるのだろうか。